日本の豊潤な酒文化は、杜氏や蔵人と呼ばれる職人たちのたゆまぬ努力で洗練されていった。能登半島地震や九州豪雨など、酒造りにも深刻な影響をもたらす災害が相次ぐ中、伝統を絶やさないという職人たちの共通の思いは、酒蔵を超えた連帯の輪も生み、未来に継承する力となっている。
【杜氏】
酒造りをする蔵人(くらびと)たちを統括する責任者。冬に集中的に醸造するようになった江戸時代、各地で杜氏集団が誕生。南部(岩手)や越後(新潟)、丹波(兵庫)、能登(石川)などが有名。
【こうじ(麹)】
カビの一種であるこうじ菌を米や麦などに繁殖させたもの。酒の原料のでんぷんを「糖化」し、酵母によるアルコール発酵を促したり、酒の風味を豊かにしたりする役割がある。
【もろみ】
酒類になる前段階の発酵したもの。日本酒はこうじ、蒸し米と水に酵母を加えた「酒母」を造り、さらにこうじ、蒸し米、水を加えて発酵させたもろみを搾り、酒粕(かす)を分けて酒にする。
【発酵】
微生物の働きで糖を分解し、アルコールを生成する過程。日本酒は、こうじによる「糖化」と、酵母の働きでアルコールを生成する「発酵」を同時に行う「並行複発酵」を特徴とする。
【蒸留】
もろみを熱して気体にし、冷却して再び液体にすることでアルコール度数を高める手法。焼酎は水とこうじと酵母を合わせた「一次もろみ」に蒸した芋や麦などと水を加えて「二次もろみ」を造り、発酵させてから蒸留する。泡盛は一次もろみを蒸留して造られる。
(2025年2月2日付 読売新聞朝刊より)
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