2022年度から3年計画で修理を進めている長命寺(滋賀県近江八幡市)所蔵の重要文化財「長命寺文書」について、所蔵者、文化庁、滋賀県、近江八幡市、寄託先の安土城考古博物館の担当者らが〔2024年〕11月12日、修理現場の坂田墨珠堂(大津市)で今後の作業方針を協議した。
長命寺文書は平安~明治時代の古文書群(全4567通)で、このうち「穀屋文書」51通と、江戸時代に描かれた「長命寺参詣曼荼羅」3点の修理を進めている。
参詣曼荼羅は長命寺の伽藍や門前町の繁栄ぶりが華麗に紙に描かれ、尼僧が寄付や参詣を呼びかけるため携えて各地を巡り、人々に見せて寺や仏の霊験を説いた。持ち運ぶために折り畳まれた当時の形態を、今に伝えている。
折り目の部分は絵の具が剥がれ落ちるなど傷みが目立ち、とりわけ、縦、横の折り目が交差する部分は損傷が著しかった。これまでの修理で欠損部に補修紙を施し、剥落の進行を止める処置を進めてきた。
修理後は掛け軸にして保存することも検討されたが、歴史的な経緯を重視し、折り畳んで持ち運ばれた形態で保存する。
この日の協議では絵画への負荷を少なくするため、折り目は最終的に縦方向のみとし、修理前の折り畳み箇所で折り畳むことを確認した。
武内隆韶住職(71)は「参詣曼荼羅は史料性を重視し、折り畳んだ形で将来に伝えることに決めた。当時の参詣曼荼羅の姿を後世の人がありのままに見ることができるように判断したのは、たいへん貴重なこと」と語った。
(2025年1月5日付 読売新聞朝刊より)