国立劇場が主催する入門者向けの歌舞伎鑑賞教室が〔2024年6月〕1日、東京・荒川区役所前のサンパール荒川で開幕した。今回は上方歌舞伎の名作「恋飛脚大和往来 封印切」で中村鴈治郎さんが主人公の亀屋忠兵衛を演じる。
「封印切」は初代中村鴈治郎の当たり役「玩辞楼十二曲」の一つ。大坂の飛脚屋の忠兵衛と遊女梅川を巡る恋愛模様を描いた物語で、忠兵衛が梅川を身請けするため、客から預かっていた小判の「封印」を破る大罪を犯してしまう。江戸時代に実際に起きた横領事件が題材になっている。
鴈治郎さんは上方の歌舞伎について、「市井で生きる人たちのドラマを描いたものが多い。江戸・荒川の地で上方の匂いを感じてもらえたら」と語った。
梅川を演じるのは市川高麗蔵さん。上方歌舞伎の名女形だった片岡秀太郎さんからは、言葉のイントネーションではなく行間の空気感を大切にするようにと教わったという。「音で上方の雰囲気を作ろうとしてしまうが、忠兵衛をどう思っているかを大切にしたい」と抱負を語っていた。
公演は21日まで。5、6日は社会人向け、20日は外国人向けの鑑賞教室もある。(電)0570・07・9900。
(2024年6月2日付 読売新聞朝刊より)