日本美を守り伝える「紡ぐプロジェクト」公式サイト

2023.11.13

【修理リポート】重要文化財「東妙寺文書」(佐賀・東妙寺蔵)巻物解体 1通ずつ保管へ

巻物から1通ずつに分けた文書の説明を受ける早田住職(左から2人目)

紡ぐプロジェクトによる助成対象の文化財は現在18件。適切に修理し、保管していくために、調査、協議を進めている。佐賀・東妙寺の「東妙寺文書」、和歌山・成就寺の「方丈障壁画 長沢芦雪ろせつ筆」の重要文化財2件の修理現場をリポートする。

東妙寺(佐賀県吉野ヶ里町)所有の重要文化財「東妙寺文書」について、修理後の形態を話し合う会議が〔2023年〕8月、九州国立博物館(福岡県太宰府市)で行われた。

同文書は、後醍醐天皇による命令書、綸旨りんじを含む鎌倉時代の文書を中心に、32通を3巻の巻物に仕立てたものだ。修理は巻物を解体して1通ずつに分けて、欠失部分の補修などを行っている。

修理を担当する「修理工房 宰匠ざいしょう」(福岡県筑紫野市)と文化庁の担当者が、東妙寺の早田空順住職(52)に現状を説明。修理後の形態を巡り、寄託先の佐賀県立博物館の担当者も交えて検討した。巻物の状態には戻さず、箱を新調して1通ずつ保管するのが望ましいとの意見でまとまった。紙の厚みや折り跡など、文書作成当初の状態も確認しやすいという。

早田住職は「末永く保管しやすい状態で修理を完了し、文書に残る痕跡を含め、多くの情報を後世に伝えられるようにお願いしたい」と話した。修理は2024年度末までの予定。

(2023年11月4日付 読売新聞朝刊より)

紡ぐプロジェクトとは


国宝や重要文化財、皇室ゆかりの名品、伝統文化、技術などを保存、継承していく官民連携の取り組み。文化庁、宮内庁、読売新聞社が2018年に開始した。展覧会の収益の一部や、企業からの協賛金などを活用し、文化財の修理を助成し永続的な「保存・修理・公開」のサイクル構築を目指す。これらの文化財の魅力や修理作業の経過に加えて、次世代に伝える伝統芸能、工芸の技術などを、紙面やサイトを通じて国内外へ情報発信している。

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