2023.7.26
富山「オーバード」中ホール
富山市の芸術拠点「オーバード・ホール」に中ホールが〔2023年7月〕1日開館し、歌舞伎俳優・坂東玉三郎さんと太鼓芸能集団「鼓童」がこけら落とし公演「アマテラス幻想」を行った。市民にとって至芸を間近に見る貴重な機会で、無料招待には1万1000人以上の応募があった。玉三郎さんも「こけら落としは舞台に立つ人間にとって特別な意味がございます」とやりがいを表した。
中ホールは最大652席の可動式客席を備え、隣接する大ホール(2196席)と併せて、演目や企画の可能性を広げる。この日も大ホールではライブビューイングが行われた。「こういう新しい劇場が各地方にできること、しかも富山で大劇場も中劇場もあるというのは、舞台人としてはうれしいことです」と、玉三郎さんも歓迎する。
演目は、太陽神アマテラスが荒くれ者のスサノオに呆れ、天の岩戸に閉じ込もる神話を題材にした舞踊劇。地鳴りのような太鼓で幕を開け、鮮やかなオレンジ色の着物に身を包んだアマテラスが登場すると、その美しさに会場全体が息をのんだ。
スサノオ役、鼓童の中込健太さんは駆け込んでケンカ腰で太鼓を打ち、粗暴さを体現する。対照的にアマテラスはひたすら優美で、素早い移動も長い装束を大きく翻す動作も、滑らかで気品を保つ。2人の会話が太鼓の音で表される場面もあった。
アマテラスが姿を隠した後は、皆川まゆむさん演じるアマノウズメが躍動的なダンスを披露。岩戸が開き、再び姿を現したアマテラスは真っ白な衣装で、神々しく舞台を照らした。演奏は太鼓に加えて笛や川瀬露秋さんらによる箏の音が華を添え、開館をことほぐようだった。
「非常に演じやすくて、しかもお客様との関係が非常に良かったです」と玉三郎さん。中込さんは「真新しいホールはすがすがしく、締まりがある響きでやりやすかった。富山は文化が豊か。今後も様々な催しが開かれ、皆さんを楽しませる場所になってほしい」と話していた。
(文化部 清川仁)
(2023年7月26日付 読売新聞朝刊より)
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