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2023.2.10

【工芸品  次世代の作り手①】木工芸・中川周士さん(大津市)

木桶をシャンパンクーラーとして販路を広げる中川さん(大津市で) 中原正純撮影

工芸の分野は、国が重要無形文化財に指定する伝統の技法で制作するものから日本各地で継承されてきた実用品まで幅広い。日本の工芸は、作り手の後継者不足、生活スタイルの変化による需要減などの課題を抱えながら、新しい形や使い方で海外でも高い評価を得ている。伝統的な技法、素材を用いて、現代アートの作品を手がける作家の活躍もめざましい。ここに紹介する4人の作品を見ると、独創性に驚かされるに違いない。春には4人が出品する工芸の展覧会が開催される。未来を目指す工芸に、新しい日本の美を感じてみたい。

◇木竹工(木工芸)◇
中川周士しゅうじさん 54(大津市)

木桶の新商品開発 海外に広がる販路

木桶職人の中川周士さんの作品 中原正純撮影

短冊状の木片を円形に組み、たがで締める日本の木桶きおけは700年の歴史をもつ。すし桶や風呂桶などは各家庭で身近な存在だった。近年は生活様式の変化で需要が減る中、木桶職人としてシャンパンクーラーなどの新商品を開発して国外に販路を広げている。

木の味わいをいかした砂糖入れ(手前)や酒器

シャープな楕円だえん形のクーラーは約10年前に作った。たがで締める際に傷がつかないよう、木片の角度に試行錯誤した。新作は海外で評判を呼び、「時代に合ったよいものを作れば世界で通用する」と確信した。若手の職人4人を雇い、後進の育成にも力を入れた。

たがを1本しか使わないピッチャー、木の自然な形を生かしたぐい飲みなど、伝統にとらわれない斬新な品々が生まれた。毎年海外にも出展し、外国人から購入依頼のメッセージが届く。デザイナーと組んで高い精度の造形にするため、デジタル図面やレーザーカッターを導入した。

木桶に使う木片を切り出す

傷んだ木桶はたがを外してばらし、木片を交換できる。形状に合わせて300種類以上のカンナを駆使し、無駄にする木材も少ない。「修理すれば半永久的に使える。日本の高い技術と精神性を世界にどんどん発信していきたい」と意気込む。

1968年生まれ。実家の「中川木工芸」(京都市)の3代目。人間国宝で2代目の父・清司氏に師事し、大津市に工房がある。

(2023年2月5日付 読売新聞朝刊より)

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