この春、世界各地の優れた職人と、ものづくりの知恵などを紹介する「ホモ・ファベール展」がイタリア・ベネチアで開かれ、日本から
蒔絵 や竹工芸、染織など12人の重要無形文化財保持者(人間国宝)の作品が出品されました。主催者のミケランジェロ財団事務局長アルベルト・カバッリ氏(47)に、企画の意図などを聞きました。
「人間国宝という理念に共感し、かねて企画展を開きたかった。芸術において人(作家)を重要視し、人が宝になるというのは興味深い。
2年に1度開かれる国際的な現代美術の祭典、ベネチア・ビエンナーレ美術展が開かれ、世界中から芸術愛好家が集まるこの期間に、日本の工芸品をぜひ紹介したかった。
欧州は長い芸術の歴史を持つが、日本の工芸品の評価が劣るとは全く思っておらず、むしろ多くの人の関心を引くと思っていた。卓越した作家を厳選し、全ての作品が美しい。世界的に活躍する芸術家や建築家などからも肯定的な感想が寄せられている。
展示では、作品をショーケースで覆わなかった。機能性を見せたかったからだ。竹工芸の籠は日用品として一般家庭に普通にあるものだ。着物は体に直接触れるものだ。直接手に触れ、愛用されているものであり、人々が日常的に慣れ親しんでいる感覚を伝えたかった。
人間国宝の工芸品は、まるで詩のようだ。写真を見ただけでは理解できない。箱を開けると作品の物語が始まるように、制作過程や機能性を知って、奥深さが通じる。奥深さはすばらしい技術を持つ巨匠の仕事に由来し、その技が受け継がれていく。まさに詩だ。私もその情熱に魅了された一人だ」
ファッションブランドを扱うリシュモングループ会長のヨハン・ルパート氏と元カルティエ会長のフランコ・コローニ氏が、2016年に設立した非営利団体。優れた職人の技術の奨励と保存、文化イベントなどを支援している。スイス・ジュネーブに本部を置く。
(2022年6月5日付 読売新聞朝刊より)
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