竹工芸や
蒔絵 などの重要無形文化財保持者(人間国宝)12人の作品を紹介する国際工芸展「ホモ・ファベール展」が5月1日までイタリアのベネチアで開かれ、大きな反響を呼んだ。関係者は伝統工芸の世界的な評価の高まりに期待を寄せる。
日本の人間国宝に焦点を当てた展覧会が海外で開かれたのは初めてで、12人は全員が日本工芸会に所属する。
人選に携わったMOA美術館の内田
しかし、日本美術を体系的にまとめ、東京美術学校(東京芸術大学)設立にかかわった岡倉天心(1863~1913年)の尽力や人間国宝制度を作った1950年の文化財保護法制定により、工芸の技は辛うじて途切れることなく受け継がれてきた。
一方、西洋ではクラフト(工芸)はアート(芸術)ではないとの考え方が脈々と受け継がれてきた。
日本工芸会副理事長で人間国宝(蒔絵)の室瀬和美さん(71)は、欧州で工芸の担い手が芸術家ではなく職人として扱われてきた歴史にふれ、「結果として技術を持つ人が次第に消えていった。失われて初めてその重要性に気づき、芸術性と技術を併せ持つ日本の工芸に今、欧州は熱い視線を送っている」と話す。
展覧会が人気を博したのは「当然」と自信を示し、「日本の伝統工芸の世界的な評価の第一歩になる」と先を見据える。
日本工芸の評価は欧米で急速に高まっており、人間国宝の作品の場合、価格が日本の5~10倍になることも珍しくないという。室瀬さんは「それが世界の評価で、数十億円で取引されるモダンアートと比べればむしろ割安とも言える。評価が伴えば工芸の道を志す若手作家が増える」と期待を込める。
人間国宝を中心に伝統工芸作家、技術者などで組織する公益社団法人。陶芸、染織、漆芸、金工、木竹工、人形、諸工芸の7部会、全国9支部に約2000人が所属する。
1954年から日本伝統工芸展を開催するほか、各地の伝統工芸の向上と発展を図るため研究会、研修会など、人間国宝を講師とする技術の保存・伝承を進めている。
(2022年6月5日付 読売新聞朝刊より)
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