紡ぐプロジェクトの助成事業で修理が進められている国宝「普賢菩薩像」(12世紀)。修理の経過をたどるシリーズの3回目は、絵の表面を保護する「表打ち」などの作業を紹介する。
さらに絵の具の養生を行う
化繊紙と布海苔を使って養生を行う
作品の細かい描写を安全に維持するために、絵の具や本紙の状態を確認した上で、まず化繊紙と
表打ちは、作品を裏返して細かな作業ができるようにするための重要な工程だ。布海苔は、海藻から抽出した水溶性の接着剤で、湿りを与えると、安全にはがすことができる。通常は高温で抽出するが、はがすときにも高温の湿りを必要とするので、常温の湿りではがせるように、20~25度の低温で抽出するという。
化繊紙を2層貼り、さらに楮紙を2層重ねる。伸縮を起こさず、常に平らな状態で作業ができるよう、厚みをもたせる必要がある。紙を置き、その上から刷毛(はけ)で塗るので、作品に直接触れるわけではないが、「力を加減して、慎重に行う」(土屋三恵技師長)という。
裏面から軽い湿りを入れる
折れの部分を補強していた折れ伏せ紙に湿りを入れる
作業はまだまだ続きます。⑰は「肌裏紙を除去」です。
(2021年2月7日読売新聞より掲載)
2年にわたる普賢菩薩像の修理の流れをまとめた動画を制作しました。
伝統的な素材を用いた絵画の修理は「80年から100年ごとに行う」必要があり、作品の裏側まで見られる貴重な機会です。
今回は、以前の修理で補われた絹などを可能な限り取り除く作業が行われており、ルーペをのぞきながら、繊維を少しずつ除去する様子を初公開します。
高精細のデジタル鑑賞が楽しめる「TSUMUGU Gallery」では、普賢菩薩像の細部までクローズアップして見ることができます。詳しい作品解説とともにお楽しみください。
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