
会期中、作品の展示替えおよび巻替えがあります
前期展示①:8月6日(土)~8月28日(日)/前期展示②:8月6日(土)~9月4日(日)
後期展示①:8月30日(火)~9月25日(日)/後期展示②:9月6日(火)~9月25日(日)
展覧会のみどころ
1
日本美術を分かりやすく
「ひも解く」
「文字からはじまる日本の美」「人と物語の共演」「生き物わくわく」「風景に心を寄せる」のテーマごとに、日本美術の世界をたどります。
2
三の丸尚蔵館所蔵の国宝全5件公開
昨年、三の丸尚蔵館の収蔵品として初めて国宝に指定された5作品を、まとめて公開する初の機会になります。
- 国宝 春日権現験記絵 やまと絵の集大成として名高い絵巻/通期展示(巻四:前期展示②/巻五:後期展示②)
- 国宝 蒙古襲来絵詞 元寇の様子を描いた絵巻/通期展示(前巻:前期展示②/後巻:後期展示②)
- 国宝 唐獅子図屏風 桃山時代を代表する狩野永徳筆/前期展示①
- 国宝 動植綵絵 伊藤若冲の代表作/後期展示①
- 国宝 屏風土代 平安時代三跡の一人・小野道風の書/後期展示②
3
若冲「動植綵絵」10幅公開
さまざまな生き物や植物を緻密に描いた傑作「動植綵絵」。
あらゆる生き物の尊い生命、生きているからこその美しさを描き表わそうと、約10年をかけて若冲が制作した全30幅の大作。動植物の構図を熟慮し、自身が学んだ絵具の使い方や描き方を駆使して独特の世界観を表わしています。色鮮やかに表現された雄鶏が圧巻の〈向日葵雄鶏図〉や、70種類近くの虫が画面いっぱいに描かれた〈池辺群虫図〉など、本展では10幅を一堂に公開します。
本展で公開される10幅は以下の通りです。
芍薬群蝶図、梅花小禽図、向日葵雄鶏図、紫陽花双鶏図、老松白鶏図、芦鵞図、蓮池遊魚図、桃花小禽図、池辺群虫図、芦雁図/後期展示①
国宝動植綵絵
伊藤若冲筆/江戸時代・宝暦7年(1757)頃~明和3年(1766)頃/後期展示①
「向日葵雄鶏図」
宮内庁三の丸尚蔵館
三の丸尚蔵館は、1989年に天皇陛下(現在の上皇陛下)と皇太后陛下(香淳皇后)が、昭和天皇の遺品を国にご寄贈されたことに始まります。1992年に皇居東御苑内に建設され、翌93年に開館しました。皇室に代々受け継がれた絵画・書・工芸品などの美術品類に加え、旧秩父宮家のご遺贈品、香淳皇后のご遺品、旧高松宮家のご遺贈品、三笠宮家のご寄贈品が加わり、現在約9,800点の美術品類を収蔵しています。
東京藝術大学大学美術館
東京藝術大学大学美術館は、1887年の東京美術学校(東京藝術大学の前身)の設置に先立つ時期から、135年以上にわたって美術教育に資する「参考品」として収集されたコレクションを基盤に設立されました。現在の収蔵品は3万件余りに達しています。資料の収集・研究・保存・公開といった美術館の基本的な活動に加えて、制作と教育研究の現場である芸術大学という特質を合わせた、実験的な美術館として機能することを基本理念としています。
伝統技術を結集した優美な明治期の記念的逸品
菊蒔絵螺鈿棚
川之邊一朝・六角紫水ほか作/明治36年(1903)/通期展示
東京美術学校に図案を依嘱し、皇居内に設けられた制作場で約9年をかけて制作されました。日本の優美で繊細な感覚と、細部に至るまでの熟達した伝統技術が結集され、宮内省と東京美術学校が共に尽力して仕上げた逸品です。
各章の紹介
1章
文字からはじまる日本の美
平安時代、日本人の感性によって生み出された優美な仮名は、物語や和歌を発展させ、さらにそれらによる様々なモチーフが豊かな美術意匠へと展開していく土壌を築きました。
"平仮名の完成形"が認められる古筆の名品
粘葉本和漢朗詠集
伝藤原行成筆/平安時代(11世紀)/通期展示(場面替あり)
流麗な仮名と柔和な漢字の取り合わせが美しく、色とりどりの唐紙に雲母で摺り出された文様が文字と絶妙に融合しています。洗練された筆致から平安時代の古筆の中でも屈指の名品であり、平仮名の完成形を認めることができます。
三跡の一人、
小野道風による日本独特の書体
国宝屏風土代(部分)
小野道風筆/平安時代・延長6年(928)/後期展示②
漢字が日本に伝わった当初は、中国で流行した王義之や顔真卿などの書体の模倣が主流でしたが、平安時代中頃以降になると「和様」と呼ばれる日本独特の書体が確立されていきます。本作は下書きながらも筆致は伸びやかで柔らかく、後世、和様の書のお手本とされた小野道風の書の特徴が見られます。
2章
人と物語の共演
人々の日常生活、信仰、回想や幻想などから創出された様々な物語は、折々の日本の四季の風景や人々の有り様を豊かに描き表わし、深遠な日本美の世界に我々を誘います。
秀吉の元猶子・智仁親王邸宅を飾った源氏物語図
源氏物語図屏風
伝狩野永徳筆/桃山時代(16~17世紀)/前期展示②
『源氏物語』のうちの「若紫」「常夏」「蜻蛉」の場面が描かれています。大振りに描かれる人物の面長で端正な顔立ちは、狩野永徳の様式を受け継ぐ絵師によるものと考えられ、重厚で華麗な描写は桃山時代の気風を伝えます。
豊麗な色彩と緻密な描写… 鎌倉時代後期やまと絵の最高峰
国宝春日権現験記絵 巻四、五
高階隆兼筆/鎌倉時代・延慶2年(1309)頃/通期展示(巻四:前期展示②/巻五:後期展示②)
本作は当時トップクラスの貴族が、絵所預(宮廷絵師集団の責任者)であった高階隆兼に命じて描かせた作品で、鎌倉時代後期のやまと絵の最高水準を示します。さまざまな人物、調度類、折々の景物や生き物など、豊麗な色彩で細部まで緻密に描写されています。
描かれた「てつはう」は長崎の水中遺跡からも発見
国宝蒙古襲来絵詞(前巻部分)
鎌倉時代(13世紀)/通期展示(前巻:前期展示②/後巻:後期展示②)
鎌倉時代の2度に及ぶ蒙古軍の来襲(元寇)に参戦、奮闘した肥後国(現在の熊本県)の御家人・竹崎季長を主人公とした絵巻。前巻に文永の役と鎌倉下向、後巻に弘安の役の様子が描かれています。様々な武士の甲冑姿や、駈けゆく馬の姿の描写は実に見事です。
日本彫金の極み
パリ万博で世界へお披露目
太平楽置物
海野勝珉作/明治32年(1899)/通期展示
太平楽は天下泰平を祝う舞楽の1つ。甲冑姿の舞人の左肩から弓の代わりに弓形の魚袋(宮中に入る許可証が装飾品になったもの)を下げ、矢を納める胡鑛を背負いますが、矢は逆さに入れられ、平和の舞を象徴しています。当時の日本における彫金の最高傑作といえます。
3章
生き物わくわく
人は様々な生き物と共存する中で、生き物への愛おしみや尊崇、感謝などの様々な想いを、美術造形に表現してきました。生命あるものへの多彩な眼差しによる表現のかたちを見つめます。
ひときわ目をひく あの、日本一有名な鮭
重要文化財鮭
高橋由一筆/明治10年(1877)頃/東京藝術大学蔵/通期展示
日本における油絵の基礎をつくった高橋由一50歳頃の作。当時、吊るされた鮭の画題は人気があったようで、他にも鮭の図はいくつか現存しますが、なかでも本作は特別に大きく、目を引きます。吊るされた鮭だけを描くため、お手製の画面は縦長に仕立てられています。
写実的描写で画面に新風
牡丹孔雀図
円山応挙筆 江戸時代・安永5年(1776)/後期展示①
ニワトリの特徴を見事に捉えた、日本近代彫刻の祖・高村光雲の代表作
矮鶏置物
高村光雲作/明治22年(1889)/前期展示①
観察鋭く、対象を写実的にとらえた木彫で、明治期の彫刻界を牽引した高村光雲の代表作です。脚の細かな指や爪の表現、量感のある羽の毛並みは繊細で、伝統的な木彫技術を駆使して、矮鶏の身体的特徴を見事に捉えています。
精巧な牙彫であらわされた可愛らしい子犬
羽箒と子犬
明治~大正時代(20世紀)/前期展示①
根付彫刻の技術を生かし、羽箒の紐を口にくわえて遊ぶ子犬を彫り表しています。垂れた耳にトロンとした目、丸々とした身体に柔らかな毛並み。手のひらに乗るほどの大きさながら、その愛くるしい姿と表情が見る人を魅了します。
兎
杉田禾堂作(原型)・工芸成形社/昭和12年(1937)/通期展示
4章
風景に心を寄せる
豊かな自然は人々の心を動かし、古くから文学や絵画に表現されてきました。身近な風景や自然現象に対する素直な感動や畏怖の表現は、美の世界を広げ、さらなる感動をもたらします。
洲浜に松、波、飛ぶ千鳥… 風情豊かで品格ある海北友松の作
浜松図屏風
海北友松筆/江戸時代・慶長10年(1605)/前期展示①
洲浜の曲線が波間と砂浜を大胆に分け、波間は銀泥の細やかな波と金泥の霞が絶妙なバランスを見せ、千鳥の群れが描く飛行線は穏やかな動きを加えます。伝統的な画題である「浜松図」が、伝統的なやまと絵技法によって瀟洒で品格ある作品に仕上げられています。
花瓶全体を境界なき絵画空間へ昇華
卓越した表現と技術の結集
七宝四季花鳥図花瓶
並河靖之作/明治32年(1899)/通期展示
明治天皇の御下命を受け、1900年のパリ万国博覧会に出品するために制作されました。漆黒のなかに鮮やかに浮かび上がる桜と紅葉、そして様々な花々と野鳥たち。繊細華麗な有線七宝と絵画的な空間構成が融合した傑作です。
宇治川蛍蒔絵料紙箱・硯箱
初代飯塚桃葉作/江戸時代・安永4年(1775)/前期展示①
伝統と革新!山水画を一変させた近代日本画の寵児
雨後
川合玉堂筆/大正13年(1924)/前期展示①
※収蔵先を記載していない作品は、
すべて宮内庁三の丸尚蔵館蔵