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2021.3.26

【ズームで楽しむ!松林図屏風】vol.3 実は左右が逆!?

国宝「松林図屏風」左隻(長谷川等伯筆、東京国立博物館蔵)

近世水墨画の最高傑作とされる長谷川等伯(1539~1610年)筆の国宝「松林図屏風びょうぶ」(東京国立博物館蔵)。高精細のデジタル鑑賞が可能な「TSUMUGU Gallery」を通して作品の魅力に迫るシリーズの3回目は、屏風の左右がもともと逆だったのではないか――との説について、東京国立博物館研究員・松嶋雅人さんの解説をもとに紹介する。

■屏風の右隻と左隻の位置関係は、実は逆だった?
松林図屏風の左隻・右隻の通常の位置関係。両端に等伯の印があり、雪山が中央奥に来る構図だ

松林図屏風の右隻・左隻については、等伯の印(実際には本人のものではない)が押された箇所を左右の両端として並べたものが、通常の位置関係だとされている。

だが――。もともとは「右隻が左で、左隻が右」だったのに、後から押された印の位置に影響されて、左右が入れ替わってしまった可能性もあるのではないか。松嶋さんは、そうした仮説について言及する。

「今のように(雪山が中央上に来るよう)右隻・左隻を並べたほうが、屏風の形としては何となくいい世界になる。 構図的にいいんです。 でも、等伯が描いた時点では、本当は構図が逆だったかもしれない」

つまり、本来は左右が逆だったのに、反対に並べたほうが構図として良いから、後の時代に誰かが偽の印をつくり、逆に押した――。そんな仮説を提示した研究者もいる。

左右を逆にしたパターン。等伯のハンコは中央に寄るが、松の傾きがそろう

「TSUMUGU Gallery」>「詳しく知る」ではストーリーの途中で、仮に左右を逆転させたらどのように見えるかの画像を紹介している。すると、中央付近で松の傾きがそろう。さながら同じ方向から風を受ける防風林のようにも見える。

そもそも、この屏風自体がもともと左右一対の屏風ではなく、もっと大きな絵だったのではないか、との見方さえある。その考察については、次回に改めて触れてみたい。

<vol.4「実は下絵だった?」に続く>

■高精細のデジタル鑑賞を「TSUMUGU Gallery」で!

高精細のデジタル鑑賞を楽しめる「TSUMUGU Gallery」では、松林図屏風のストーリーとともに細部までクローズアップして作品の魅力を味わえます。ぜひご覧ください。

https://tsumugu.yomiuri.co.jp/gallery/

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