2020.9.17

世界が愛する日本のKōgei~工芸は日本文化の本流(MOA美術館・内田篤呉館長)

内田篤呉館長

東京・上野の東京国立博物館で開幕する特別展「工藝2020―自然と美のかたち」は、 日本美術の本流として長く日本の豊かな自然が育む美を伝えてきた工芸の魅力を、改めて発見できる場となりそうだ。MOA美術館長の内田篤呉さんが、日本における工芸の歩みを振り返る。

日本文化の中心に自然観がある。本展では、日本の工芸の思想を自然と絡めて明らかにしていく。正倉院宝物の90%以上が工芸品であることからもわかるように、日本文化の本流は工芸にある。21世紀に見直され、世界に発信されることは、工芸家にとって悲願だった。

日本の工芸は西洋の価値観が入ってきた近代に、実用品だから価値が低いと位置づけられた。だが、例えば、楽焼の創始者・長次郎の茶碗ちゃわんを展示する時は、作品の力が強く、そばにほかの作品を置けない。単に茶を飲むための器ではあるが、茶の湯に対する思想が詰まった、びの極致だからだ。

日本の工芸は自然に寄り添って作られる。竹工芸も、編む時に力を入れすぎると割れてしまう。柔軟性を生かしながら、限界ギリギリのところを竹と対話しながら編んでいく。これは、世界が平和に暮らしていくために重要な思想だろう。争わないのが日本文化の特色だ。

日本人は古来より、自然を美として、人間の生きる規範としてきた。その普遍的な美を最も体現しているのが工芸だ。自然破壊が進む現代において、その自然観は国境を超えて人々をつなぐ思想になりうる。最近、日本の工芸が面白いという海外のキュレーター(企画展示者)が増えてきた。持続可能性に対する関心もあるだろう。本展を機に、さらに広がることを期待する。 

(2020年9月6日付読売新聞朝刊より掲載)

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