2021.4.17

【連載・聖徳太子1400年遠忌】<中>「絵伝」 説話や道徳示す

■ 四天王寺で「絵解き」
四天王寺の建立や摂政となった太子を表現した場面を指し示す滝藤主任(大阪市で)

「16歳のとき、戦いに臨む聖徳太子は四天王像を刻み、『戦いが終われば、四天王をまつる寺を建てる』と願いました。勝利して四天王寺を建立した場面が、ここに描かれています」

四天王寺(大阪市)の絵堂で、太子の一生を色鮮やかに描いた障壁画「聖徳太子絵伝」を指し示し、参詣課の滝藤康教主任(40)が教えてくれた。

奈良時代、聖武天皇の命で、四天王寺に太子の一生を描いた絵が作られた。それ以来、僧侶たちは、太子の事績を紹介しながら仏教の教えを説く「絵解き」の素材として活用してきた。

今も絵堂では、春と秋に行われる2週間の特別公開で、僧侶が絵解きを続けている。太子が定めた冠位十二階や当時の地図を解説したパネルを掲げ、参拝者とやり取りしながら、約1時間で30ほどの主要なエピソードを紹介する。

コロナ禍で迎える太子の1400年遠忌に向け、四天王寺は2020年末から月1回、絵解きのオンライン配信を始めた。滝藤主任は、絵解きを続ける意図を説明する。「多くの人に分かりやすく太子の慈悲の精神を伝えるには、今なお効果的です」

■ 絵本作り児童へ配布

聖徳太子絵伝は、仏教の宗派を問わず信仰の対象となった太子の一生を解説するために使われ、近年も活用の幅は広がり続ける。

奈良県斑鳩町は昨年1月、大阪芸術大と協力し、絵伝などを基にした絵本「いかるがの皇子さま―聖徳太子えほん」を発行した。

病気になった父(用明天皇)を熱心に看病したことなど、太子が残した様々な説話が優しいタッチで描かれる。子どもたちの産湯のために三つの井戸を掘り、現在も町内に三井という地名が残されていることなどにも触れ、郷土の歴史も紹介している。

2020年末、町内の小中学校で全ての児童・生徒に配布した。21年度から郷土の偉人などを学習する時間に使う。町教育委員会総務課の吉川也子係長(44)は「絵本を活用することで、太子の和の精神を大切にし、郷土に誇りを持つ子どもが育つよう学習を進めたい」と話す。

■ AR使った鑑賞も
馬に乗って空を飛び、富士山を登る太子(「5Gで文化財 国宝『聖徳太子絵伝』アニメーション」より)

昨年9~10月、東京国立博物館で、最新のAR(拡張現実)技術を使い、同館が所蔵する国宝「聖徳太子絵伝」(1069年)を鑑賞する企画が催された。

専用メガネをかけ、絵伝の複製画をのぞき込むと、「ヒヒーン」といういななきとともに、雲の上で馬に乗った太子の絵が登場。太子が乗る馬は空をかけ、富士山を飛び越え、本来描かれている位置に戻った。

ARのほかにも、複製画にスマートフォンをかざせば、超高精細画像が映し出され、文字と音声で解説される。期間中に1400人以上が体験し、絵伝の内容や背景をより理解できると好評だったという。

奈良県立図書情報館の千田稔館長(78)(歴史地理学)は「絵伝は、太子の教えを分かりやすく伝え、信仰が庶民に浸透する役割を担った。内容は偉人の伝説だけではなく、親孝行など道徳の要素も強い。だからこそ受け継がれ、今なお教育などで活用できる意味がある」と語る。

(2021年3月27日読売新聞奈良県版から)

合わせて読みたい
特別展「聖徳太子と法隆寺」公式サイトはこちら

https://tsumugu.yomiuri.co.jp/horyuji2021/

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