2021.4.18

【連載・聖徳太子1400年遠忌】<下>数々の遺産でまちおこし

■ 斑鳩三塔 映像作品に
「斑鳩には今も太子を感じる瞬間があります」と語る横田さん。後ろ側に見えるのは法隆寺五重塔(奈良県斑鳩町で)

四季折々の奈良県斑鳩町の風景が、人々の営みとともに映し出される。青々と稲が茂る田んぼ、祭りの太鼓台が練り歩く路地、雪で覆われた家屋、そして春が巡り、桜が咲き誇る。映像の奥にはいつも、三塔がどっしりとした姿で構えている。

ユーチューブで3月、公開された映像作品「三塔周景」。聖徳太子ゆかりの法隆寺五重塔、法起寺三重塔、法輪寺三重塔の「斑鳩三塔」をテーマに描いている。

浄念寺(奈良県斑鳩町)の住職で映画監督の横田丈実さん(55)が2010年から2年間かけて撮影し、太子の1400年遠忌を記念して発表した。「住民にとって三塔は太子そのもののような存在ですから」。制作に込めた思いを語る。

この地で太子は斑鳩宮を造営して暮らし、近くに法隆寺を建立して仏教を広めた。斑鳩と飛鳥を行き来した道は、「太子道」と呼ばれて親しまれる。「斑鳩では太子の息づかいが感じられる」という横田さんは、「映像で風景を楽しんでもらい、訪れてもらうきっかけになれば」と願う。

■ バギーで観光地巡り
法輪寺三重塔を背に走るバギー(奈良県斑鳩町で)=井上雅仁社長提供

太子が残した数々の歴史的遺産は、まちおこしに活用されてきた。

青空の下、バギーに乗って時速30キロほどで風を切って駆け巡る。法隆寺の参道を走ったり、古い町並みの中を通り抜けたり。観光スポットでは停車し、見学できる。約2時間、古代の雰囲気をたっぷり味わえる。

19年2月、まちづくりに取り組む地元の斑鳩産業が始めた斑鳩三塔をバギーで巡るツアー。その様子を紹介した動画が香港で話題となった。その後10か月で利用した約200人のうち、半数をインバウンド(訪日外国人)が占めていた。

「太子が残した歴史遺産が持つ力を改めて実感した」。井上雅仁社長(49)は、反響の大きさに驚いた。新型コロナウイルス収束後を見据え、今後も様々なツアーの提供を続ける。

■「雪丸」で町PR

太子の愛犬・雪丸が葬られたとされる達磨寺のある奈良県王寺町では13年、烏帽子えぼしをかぶり、しゃくを手にした白い犬のキャラクター「雪丸」を町の観光・広報大使に任命した。

JR王寺駅を出ると、散歩道「雪丸ロード」が整備されている。犬の足跡が点々と1キロ続き、雪丸のイラストが描かれた橋があり、一緒に写真が撮れるフィギュアも置かれている。ゴールとなっている達磨寺にも石像がある。

王寺町は、仕掛け続ける。雪丸がドローンになり、空中散歩する動画を公開し、話題を集めた。太子の遠忌を記念し、ラベルに太子と雪丸を描いたワインの販売も始めた。王寺町の前田日出高参事(52)は「愛犬家や若い世代など新たな層の開拓ができた」と胸を張る。

遠忌の今年は、様々なイベントが予定される。秋には、横田さんが脚本を書いた演劇「人情芝居 十七条憲法」も斑鳩町で上演される。現代の家族物語に太子が定めた十七条憲法を絡めた作品になるという。横田さんは遠忌を機に思いを強くした。「斑鳩に生きる者として、太子が残した精神や文化を次世代に受け継ぐ使命がある」

(この連載は、土谷武嗣が担当しました)

(2021年3月29日読売新聞奈良県版から)

特別展「聖徳太子と法隆寺」公式サイトはこちら

https://tsumugu.yomiuri.co.jp/horyuji2021/

合わせて読みたい

Share

0%

関連記事Related articles

編集部からFrom the Editor

一覧ページへ