たばこと塩の博物館 開館情報
- 開館時間
- 当面の間11時~17時
(入館締切は16時30分)
- 休館日
- 月曜日
(月曜日が祝日、振替休日の場合は直後の平日)
年末年始
(2020年12月28日~2021年1月4日)
- 入館料
- 大学生・大人100円、
小・中・高校生と65歳以上(要証明書)50円。
- 住所
- 〒130-0003 東京都墨田区横川 1-16-3
※最新の開館情報につきましては、 公式ツイッターあるいは
お電話03-3622-8801(代表) でご確認ください。
歴史と文化をテーマにした
世界唯一の博物館が東京にある。
19781978年に日本専売公社が設立した
「たばこと塩の博物館」。
現在はJTJTの委託により
運営される企業系博物館だが、
自社商品や企業の歴史の紹介を超え、
多彩な文化を発信し、多くの人が訪れる。
20152015年に渋谷区から墨田区に移転、
リニューアルし、
ファン層はさらに広がっている。
「たば塩」の愛称でも親しまれる
同館の歴史を
大切に受け継がれてきた
名品の数々を紹介しよう。
20世紀の工業デザインに大きな影響を与えたレイモンド・ローウィの業績、調度品などを指先に乗るほどのサイズに細工したミニチュア工芸品、浮世絵に刷られた絵から連想される言葉を当てる判じ絵、そして柔らかな線で描かれたポートレートが人気を集めた和田誠のイラスト……。これらの共通点とは?「いずれも、当館で紹介してきた特別展のテーマなんです」と千々岩良二館長が教えてくれた。しかし、どこがたばこや塩と関連するのか。ローウィはたばこの「ピース」、和田は「ハイライト」のパッケージをそれぞれデザイン。ミニチュアは同館への寄贈品を中心にしたコレクション。判じ絵は浮世絵の多彩な魅力を伝えてきた同館ならではの企画だ。
「人々の生活のありかた、展示品に込められた想いや歴史を広く伝え、多くの人に来ていただける多彩で魅力のある博物館でなくてはならないと考えています」と千々岩館長はその使命を語る。そうした思いが学芸員はじめ、スタッフにも浸透していることが、特別展のテーマのみならず様々な工夫を凝らした展示空間からも伝わってくる。「たばこと塩を通して、庶民の風俗や周辺文化を次世代に紡いでいきたい」と、千々岩館長は熱をもって話す。
色や質感が異なる
塩標本を紹介(手前は天日塩)
アメリカで開発された
紙巻きたばこ製造機
岩塩で作られた
シャンデリア
海水からとった
濃い塩水を煮詰める
工程で使う釜屋
(石川県仁江海岸)
を移築・復元して展示
1891年(明治24)に発売された
紙巻きたばこ
「サンライス」のパッケージ
江戸時代から昭和まで制作された
たばこ盆約700点を収蔵
(一部を展示)
メキシコ・パレンケ遺跡にある
「たばこを吸う神」の
レリーフのレプリカ
ポーランドの
ヴィエリチカ産岩塩で
作られた岩塩彫刻・
聖キンガの祭壇
メキシコ・マヤ地方で発掘された
6~9世紀の「半獣半人喫煙図彩文鉢」
ヨーロッパの嗅ぎたばこ入れ
近現代のたばこ産業の
移り変わりを展示
同館の開館は1978年だが、
旧大蔵省専売局長官の佐々木謙一郎氏が
1932年にたばこの歴史資料の収集を
始めたことが出発点。
専売品であった「たばこ」と「塩」の歴史と
文化をテーマとする博物館として
関連資料や美術品の収集、調査・研究を行
い、その歴史と文化を広く紹介している。
「子どもを抱く女性像形
メアシャムパイプ」
例えば、19世紀にヨーロッパで使われていた子供を抱く女性像をかたどったメアシャムパイプ。「メアシャム」とは地中海沿岸で採取される鉱物のこと。「海泡石」とも呼ばれ、材質が軟らかく、細かい細工をしやすいのが特徴だ。未使用の状態では象牙色をしているが、使い込むことで飴色に変化していき、現在でもパイプ愛好者の間で高い人気を誇っているという。
レイモンド・ローウィによる
「ピース」試作品
アメリカを代表するインダストリアル・デザイナーであったレイモンド・ローウィによる「ピース」の試作品。1951年4月に来日した際、日本専売公社を訪れ、その際「ピース」のデザイン変更を依頼され、6月に正式契約、そして9月にはこの試作品が届いたという。最終的に選ばれた紺色に金の鳩の「ピース」は、1952年に発売され、売り上げを伸ばし、その後の日本の産業界にデザインの重要性を示すことになった。なお、ローウィのプレゼン資料の実物が残っているのは世界的にも珍しいとされている。
「梨子地波に葦蒔絵舟形たばこ盆」
たばこ盆のコレクションも多彩だ。「梨子地波に葦
「紀州徳川家旧蔵
梨子地草花蒔絵提げたばこ盆」
「梨子地草花蒔絵提げたばこ盆」のように紀州徳川家旧蔵で、昭和初期に大蔵省専売局が売り立てを通して手に入れたものも収蔵されている。客人とたばこ盆を挟んで喫煙ができる工夫が凝らされた逸品だが、当時旧華族が関東大震災で没落し、家財を売りに出さざるを得なかったという背景を知るとまた、見え方も変わろう。
「風俗図屏風」
絵画作品のコレクションにも目を見張る。屏風や掛け軸などの肉筆画から浮世絵まで、時代や絵師を問わずたばこの風俗を 描いたものを中心に約1800点を収集。
江戸時代の「風俗図屏風」は右隻に遊里の門前や祭礼風景、左隻に遊郭の内外で遊興にふける人たちが描かれている。たばこ屋で葉たばこを刻む職人や
「扇屋内花扇よしのたつた」
(喜多川歌麿)初版
所蔵する浮世絵の質量も堂々たるもの。喜多川歌麿による「当時全盛似顔揃 扇屋内花扇 よしのたつた」では、吉原遊廓でも最高位の遊女が、左手でかんざしを直しながら、右手で長煙管を持ち、一服付ける姿が
「汐汲みの図」(月岡雪斎)
上方の絵師、雪斎の描いた「
「大日本物産図会
播磨国赤穂塩浜の図」三代歌川広重
そして潮の満ち引きを利用した入浜式塩田※の様子を描いた「大日本物産図会 播磨国赤穂塩浜の図」。当時は国民教育のために描かれた錦絵だが、明治時代にかけて日本を支えた産業の歴史を、今に生き生きと伝えている。
※入浜式塩田…満潮と干潮の潮位差を利用して海水を導く方式の塩浜。干満差が大きく干潟があり、晴天率が高い瀬戸内海沿岸で大きく発展した。
これらのコレクションは常設展示されていないものがほとんどだ。同館のホームページに詳しい解説入りで紹介されている。ほかにも常設展示室には、江戸時代のたばこ屋が原寸大で展示されていたり、現代の製塩過程がミニチュアで紹介されていたり、じっくり見て歩くとあっという間に数時間が過ぎてしまうほど。同館で過ごす時間は、たばこや塩の知識はもちろん、庶民の生活文化や歴史を気軽に学べる場としても有意義な機会となるだろう。
特別展
「明治のたばこ王 村井吉兵衛」
たばこと塩の博物館 開館情報
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