2021.1.8

【21年度修理品から①】美を守る~平安仏画の傑作、次代へ

文化庁、宮内庁、読売新聞社が官民連携で進める「紡ぐプロジェクト」は、2019年度から文化財の修理助成事業に取り組んでいる。2021年度は、公募の中から、有識者で作る選考委員会が6件を選定した。制作背景や歴史を振り返りつつ、修理の方針を紹介する。

国宝 絹本著色けんぽんちゃくしょく阿弥陀あみだ聖衆しょうじゅ来迎図らいごうず (和歌山・有志八幡講蔵)

国宝 絹本著色阿弥陀聖衆来迎図(和歌山・有志八幡講蔵、部分)
■比叡山から逃れ? 

縦2メートルを超える大画面の中心で、菩薩ぼさつたちに囲まれた阿弥陀仏がまっすぐ前を見据える。かつてこの絵を前にした人は、極楽に迎えられるような気分になったことだろう。

光り輝く存在として金色で表現された阿弥陀仏に対し、菩薩は人間のような白っぽい肌の色をしている。楽しげに楽器を演奏し、笑った口元からは歯が見えるなど、親しみやすい表情も特徴だ。画面の左端には、葉が赤く色づいた木などが描かれ、現実世界とのつながりを感じさせる工夫もみられる。

平安時代後期の制作と推定され、当時の最高の技術が用いられている

どのような経緯で制作されたのかは不明だが、後白河天皇が描かせたという説がある。室町時代には比叡山にあったことが確認されており、織田信長が比叡山を焼き打ちした際に持ち出された可能性があるという。豊臣秀吉が高野山に寄進したという説もあり、波乱に富んだ来歴も興味深い。

■裏打紙の交換   

近代に入って修理されたと考えられるが、長い歳月を経て裏に貼った裏打うらうち紙の接着力が低下し、絹の浮きが見られる。絵の具の剥落はくらくも進み、表面には汚れが付着している。5年かけ、絵の具の安定化や、裏打紙の取り換えなどを行う。

(2021年1月7日読売新聞より掲載)

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