2021.2.16

【大解剖!普賢菩薩像の修理】vol.4 数日で「はがき1枚分」 地道な作業続く

国宝「普賢菩薩像」(12世紀)の修理では、過去の修理で補った補修絹などをできる限り取り除く方針で進められている。ピンセットを使った細かい作業が専門の技師によって慎重に行われ、今後も続いていく。

⑰肌裏紙を除去(1)

肌裏紙の繊維を除き薄くする

⑱肌裏紙を除去(2)

筆で少量の湿りを入れてピンセットで少しずつ繊維を除く

⑲補修材を除去

古くなった補絹や補修紙を筆で湿らせて除く

■繊維1本ずつ

今回の修理方針では、オリジナルの作品がよく見えるよう、以前の修理で補われた補修絹や肌裏紙などは、可能な限り、取り除くことになった。オリジナルの絹を傷めないよう、ルーペで拡大しながら安全を確認し、織り目の繊維を一本一本、崩しながら外して、確実にその繊維だけを、専用のピンセットで取り除く。

作業を行うのは、透過光を下から当てられるアクリル板の上。明かりの透け具合で素材の違いを確認し、見極めながら行う。裏側からの作業なので、表側の状態をパソコン画面で確認し、取り除いた部分を記録しながら進める。

経験を積んだ技師でも、数日をかけてはがき1枚程度、時間がかかるときは、名刺程度の面積しか進まないという、細かな作業だ。

半田社長は「平安時代に描かれたこの作品を今、我々が目にすることができるのは、約100年サイクルごとに修理されてきたから。このことはとても重要だ」と強調。土屋技師長も、「過去の修理で多くの人の手が加わり、長い間、伝えられてきた。私たちも作品を残す通過点の気持ちで、次の修理も見据え、作業に臨んでいる」と語った。

■検討会

修理の節目に修理方針などを何度も検討する

修理方針を決定する際には、技術者だけでなく、学識経験者、所有者、文化庁の担当者などが集い、議論を重ねる。普賢菩薩像の検討会は、新型コロナウイルス感染拡大の影響を受け、開けない時期もあったが、2019年から随時、開催されてきた。

修理の進み具合に応じて検討内容は変わる。欠損部分に補う新しい補修絹を選ぶ際には、サンプルを同じ形にくりぬいて作品にあてて、どれがしっくりくるかを確認するなど、細部まで丁寧に検討した。今後も節目ごとに開催し、重要課題について話し合う予定だ。

(2021年2月7日読売新聞より掲載)

~動画も公開中!~

2年にわたる普賢菩薩像の修理の流れをまとめた動画を制作しました。

伝統的な素材を用いた絵画の修理は「80年から100年ごとに行う」必要があり、作品の裏側まで見られる貴重な機会です。

今回は、以前の修理で補われた絹などを可能な限り取り除く作業が行われており、ルーペをのぞきながら、繊維を少しずつ除去する様子を初公開します。

■作品の魅力をTSUMUGU Galleryで!

高精細のデジタル鑑賞が楽しめる「TSUMUGU Gallery」では、普賢菩薩像の細部までクローズアップして見ることができます。詳しい作品解説とともにお楽しみください。

https://tsumugu.yomiuri.co.jp/gallery/

Share

0%

関連記事Related articles

編集部からFrom the Editor

一覧ページへ