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2020.3.12

日本博彩る大ユリノキ きらめく葉で風を見る 東京・上野 

上野の東京国立博物館本館前庭にそびえる「ユリノキ」の大木が、白と半透明の人工の葉でびっしりと覆われている。白い葉が青空に映え、半透明の葉は太陽の光を反射し、まばゆい輝きを放つ。

同博物館は新型コロナウイルスの感染拡大を防止するために臨時休館中だが、輝くユリノキは同博物館の敷地外からも見える。

この作品は、政府が東京五輪・パラリンピックに合わせて開催する文化芸術の祭典「日本博」のオープニング・セレモニーのために作られた。だが、14日にユリノキのある前庭で行われる予定だった式典は中止となった。

日本博のオープニングに向けてユリノキのオブジェを制作する小松宏誠さん(2月18日、東京都大田区で)=園田寛志郎撮影

制作を手がけた小松宏誠は1981年、徳島県生まれ。「軽さ」「動き」「光」などをキーワードに、自然が持つテクノロジーと人間の生み出したテクノロジーの交錯する表現を追求している。美術館での作品展示や芸術祭参加のほか、商業施設などの空間演出も積極的に行っている。

本作では、辺りを吹き渡る風に着目。「風を見えるようにしたい」と、葉の動きを計算し、光のきらめきを見せる。

北米原産のユリノキは、明治初期に日本に渡来し、その種子から育った苗木の一本が明治14年(1881年)に、この場所に植えられたとされる。博物館の歴史を見守り続けてきたシンボルツリーが光をまとい、国の重要文化財に指定されている本館の重厚な建物に彩りを添えている。(泉田友紀)

ユリノキにつけられた人工の葉は約2万枚。雨風に耐えられるよう実験を重ね、白い葉は、加工した和紙を薄く剥いだもの、半透明の葉は、光沢をもつフィルムで作った。それぞれに葉脈もつけられ、「手作業を大切にした」という。作品は14日頃まで設置されている。写真は許可を得て同博物館の前庭で撮影した。

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