日本美を守り伝える「紡ぐプロジェクト」公式サイト

2021.4.14

【和菓子ごよみ4月】さくらの和菓子―春爛漫の美と味を(後編)

髙島屋の和菓子バイヤー・畑主税さんが、毎月の行事や旬の素材にちなんだ、とっておきの和菓子を紹介します。この春の桜はずいぶん早く咲き終わってしまいましたが、3月にご紹介した美しいお菓子の数々とともに、春の名残を味わってください。

薄紅の羽二重餅 愛らしさに思わず「かわいい!」

名古屋の名店「芳光」は、わらび餅が名物ですが、ほかのお菓子ももちろん充実しています。

この季節の「桜花おうか」は見た瞬間に「かわいい!」と口にしてしまいそうな一品。薄紅色に染められたふわふわの羽二重餅にこしあんを包み、表面にツヤ出しの寒天液をかけて、塩漬けされた桜の花を添えています。名古屋のお菓子で出会うことの多い、このふわりと柔らかい餅生地がたまりません。

店主の島岡樒雄さんによると、2週間に一度ほど、扱うお菓子を替えていらっしゃるとか。暮らしの中の年中行事とともに、そして季節の移ろいとともに、和菓子を楽しむことができます。

【桜花】1個 税込み320円
芳光/愛知県名古屋市東区新出来1-9-1
TEL:052-931-4432
※販売は4月中旬までの予定。

川面を彩る「花筏」 飾らない素朴さと上品さ

桜が散り、川面をピンク色に染める「花筏はないかだ」。その美しい名前を冠したお菓子が、東京・富ヶ谷にある茶席菓子の名店「岬屋」で販売されています。

色染めをしていない白い餅生地でこしあんを包み、桜の花の焼印を施したシンプルな生菓子です。楕円だえん形で優し気にふくらんでいて、どこか愛らしいこのお菓子を、毎年、桜が散る頃に味わうのが楽しみです。飾らない素朴さの中にある、美しさと上品さが心に響きます。

【花筏】1個 税込み378円
岬屋/東京都渋谷区富ヶ谷2-17-7
TEL:03-3467-8468
※販売は毎年4月上旬まで。2021年は記事公開後、4月15日と22日の予定。

まるでガラス細工 麗しい姿をまずはご堪能あれ

毎年、春になると「紫野源水」の飴細工「桜の有平糖ありへいとう」をいただいています。

「有平糖」は金平糖などとともに、スペインやポルトガルなどの南蛮から日本にもたらされた南蛮菓子のひとつ。砂糖を煮詰めて、まだ熱が残っている柔らかいうちに着色して整形し、さまざまな花鳥風月に細工していきます。紫野源水のご主人、井上茂さんが作る有平糖は、いずれも淡い色付けで、透き通っていて色が輝いて見えて、食べるのが惜しくなるほど。

5枚の花弁は淡いピンク色で、ガラス細工のように向こう側を透かして見ることができます。中央には黄色いおしべも。若い緑色の桜の葉と共に箱に収められているので、麗しい姿を目で楽しんでから、味わいたいですね。

【桜の有平糖】1箱 税込み1296円
紫野原水/京都府京都市北区小山西大野町78-1
TEL:075-451-8857
※販売は4月中の予定。

400年の歴史ある飴屋が手がけた 越後の春

新潟・高田城下にある老舗飴屋の「髙橋孫左衛門商店」は、創業は寛永元年(1624年)だそうです。およそ400年もの歴史を誇るお店で、伝統の「粟飴」「翁飴」を作り続けています。

長い歴史を重ねてきた老舗の雰囲気を感じながら、春になったら毎年いただきたくなるのが、この「桜花さくらくびきの里」です。伝統的な製法で守られてきた水飴(粟飴)に桜の塩漬けを含ませて、寒天で固めたものを京種最中もなかではさんでいます。パリッとした最中の食感とともに、ほんのりと桜の風味が広がります。

表面には、桜とぼんぼりの焼印が施され、薄紅色に染まる美しさが素晴らしく、越後の春に欠かせない飴最中です。

【桜花くびきの里】8枚入り 税込み918円
髙橋孫左衛門商店/新潟県上越市南本町3-7-2
TEL:025-524-1188
http://www.etigo-ameya.co.jp/index.html
※販売はゴールデンウィークまでの予定。

あわせて読みたい

さくらの和菓子―春爛漫の美と味を(前編)

畑主税

プロフィール

髙島屋和菓子バイヤー

畑主税

1980年生まれ、大阪府出身。2003年に髙島屋に入社し、洋菓子売り場の担当を経て、06年和菓子売り場の担当に。京都の和菓子を作りたてのままで提供したいという思いから、人気店の上生菓子を自ら京都で仕入れ、新幹線で運び、夕方に店頭に並べ話題を集めた。全国1000軒以上を巡り、食べた和菓子は1万種以上。著書に「ニッポン全国 和菓子の食べある記」(誠文堂新光社)。ブログ「和菓子魂!」(http://blog.livedoor.jp/wagashibuyer/) Twitter:@wagashibuyer

Share

0%

関連記事