2021.2.13

【和菓子ごよみ2月】チョコレート和菓子―職人が生み出す融和の美味

髙島屋の和菓子バイヤー・畑主税さんが、毎月の行事や旬の素材にちなんだ、とっておきの和菓子を紹介します。2月は、バレンタインデーにちなみ、チョコレートを取り入れた創意工夫あふれる品々を取りそろえました。

チョコとバナナの黄金コンビ おいしさも笑いもお届け

昨春、京菓子の老舗「亀屋良長」から、コロナ禍のまっただ中に新作が発売されました。その名前も「そんなバナナ、」。久しぶりに聞きました、この言葉。新型コロナウイルスで皆が疲弊したいま、ちょっとでも笑ってもらいたい、お菓子を楽しんでもらいたいという想いから考案されたチョコバナナの羊羹ようかんです。

下の層の黄色い部分がバナナの羊羹。香料は使っていないのですが、小粒の白インゲン豆(手亡豆てぼうまめ)の白あんにバナナが練り込まれているので、しっかり風味が感じられ、バナナ特有のまろやかな甘みも引き出されていて驚きます。

そして、上の層はカカオ羊羹。まるでチョコレートソースのようにかかっています。昔からチョコレートとバナナはよく組み合わせられる「黄金コンビ」ですが、この羊羹も例外ではなく、一緒に食べると双方の風味が引き立ちます。まず上の層と下の層を別々に食べて、そのあと一緒に食べてみるのがおすすめです。バナナの甘い香りとカカオの香ばしさが、うまく重なり合うのをご堪能ください。

表面には小豆とくるみなどが散りばめられており、チョコレートケーキのようにも見えます。コロナ禍ですっきりとしない気持ちを晴れやかにしてくれますね。「そんなバナナ!」って、笑い飛ばせる日が来ることを 祈りながら食べたくなるお菓子です。

【そんなバナナ、】1本 税込み1296円
亀屋良長/京都府京都市下京区四条通堀川東入北側
TEL:075-221-2005
https://kameya-yoshinaga.com/

和菓子屋だからこそ生み出せたショコラ

バナナとチョコレートの黄金コンビに続いてご紹介するのは、山形で文政4年(1821年)に創業し、のし梅で知られる老舗の「乃し梅本舗佐藤屋」の一品。8代目佐藤慎太郎さんの代表作「玉響たまゆら」です。チョコレートとの融合でよく使われる素材は、オレンジやフランボワーズなどが主流で、和の素材ではユズといったところ。こちらののし梅との組み合わせには驚かされました。

ひと口味わってみると、梅の爽やかな酸味と奥に広がる甘み、チョコレートの香りが合わさって、違和感なく溶け込んでいます。佐藤さんからうかがったお話によると、生チョコレートの上に、お店の看板商品「乃し梅」をただのせたのではなく、生チョコレートも、白あんや寒天、生クリームなどを合わせ、自家製でしっかり仕上げているそうです。

和菓子屋さんが自己流で考え出した生チョコレートの提案ですが、これはストレートに「洋菓子」と言ってしまっても問題ないほど、チョコレートとも向き合った末に創り出された一品。乃し梅本舗佐藤屋だからこそできたショコラと言えましょう。この「玉響」のチョコレートの部分に完熟梅の果肉を加え、ブランデーでほのかに香り付けをした「光 風」もあります。

【玉響】6個入 税込み1080円
乃し梅本舗佐藤屋/山形県山形市十日町3-10-36
TEL:023-622-3108
https://satoya-matsubei.com/
※販売期間は10月から5月頃まで。

伝統銘菓を現代にバトンリレー

三重県の城下町・伊賀上野に風格のある店構えの名店「桔梗屋織居」はあります。ご主人の中村伊英さんは、お菓子の開発にはとても意欲的な方で、うるち米を使うことで飲み込みやすくする工夫を凝らした「おかゆ大福」など、これからの高齢化社会にふさわしい和菓子も生み出しています。

さて、こちらの「ながさきショコラ」、三重県の伊賀上野なのに「どうして長崎?」と思う方もいらっしゃることでしょう。伊賀上野には古く「田山屋亀栄」という老舗があり、長崎から伝わったという伝統銘菓「ながさき」を作っていました。御用菓子司「長崎屋義永」が元祖とされるスティック状の干菓子で、黒糖を水に溶き、水飴を加えて煮詰めたあと、小麦粉を混ぜ合わせながらゆっくりと冷ます。短冊状に切られたものを、ポリポリとかじるようにして食べる伊賀上野の伝統銘菓なのです。

田山屋の廃業を受けて桔梗屋織居でも作られるようになったものですが、バレンタインの時期には、ビターなチョコレートでコーティングされた「ながさき」が登場します。お菓子にチョコレートをかけたものは多くありますが、この「ながさき」とチョコレートの組み合わせは、「あるべくしてできた」という印象です。

もともと手がけていたお店が辞められることになり、一度は途絶えそうになった銘菓「ながさき」。素朴なお菓子ですが、他にはないその味わいは「どこかで残してもらいたい」と願っていました。こうして受け継がれているのも嬉しいのですが、ただバトンを受けるだけではなく、独自に進化した新たなお菓子が生まれ、ますます嬉しくなりました。

【ながさきショコラ】6個入 税込み756円
桔梗屋織居/三重県伊賀市上野東町2949
TEL:0595-21-0123
https://www.k-orii.com/

「洋」の素材を融和して進化を続ける

岐阜県大垣市には、江戸時代、大垣藩医を務めた江馬蘭斎が杉田玄白らに学び、城下に開いた蘭学塾「好蘭堂こうらんどう」がありました。そこから西洋医学を美濃に広めたのですね。その名を冠したお菓子「好蘭堂」(コランド)が、創業260年を超す「つちや」から発売されました。

かつて和菓子が南蛮菓子の影響を大きく受けたように、現在はチョコレートなどの西洋の素材をうまく融合させていく菓子が増えています。まさに西洋の象徴でもあるチョコレートに、つちや自慢の「堂上蜂屋柿」やくるみ、いちじく、ゆず、ハツシモ米を組み合わせ、それぞれの食感や香味がいきたチョコレート和菓子となっています。

このお菓子を初めて見たとき、ソーセージをかたどった洋菓子「ソーシソン」という焼菓子を思い出しました。ソーセージの脂の部分を、ナッツやドライフルーツなどで代用して表現しているのです。入社した年から3年間新宿髙島屋で洋菓子の販売を担当し、菓子人生の入口で出会った伝統の焼菓子を思い出し、懐かしい想いに浸らせてくれました。

【好蘭堂】1本 税込み1620円
御菓子つちや/岐阜県大垣市俵町39
TEL:0584-78-2111
https://www.kakiyokan.com/
※現在販売中。3月下旬~4月上旬まで(予定)。好蘭堂を一口サイズにした「小好蘭堂」は1個税込み194円。

畑主税

プロフィール

髙島屋和菓子バイヤー

畑主税

1980年生まれ、大阪府出身。2003年に髙島屋に入社し、洋菓子売り場の担当を経て、06年和菓子売り場の担当に。京都の和菓子を作りたてのままで提供したいという思いから、人気店の上生菓子を自ら京都で仕入れ、新幹線で運び、夕方に店頭に並べ話題を集めた。全国1000軒以上を巡り、食べた和菓子は1万種以上。著書に「ニッポン全国 和菓子の食べある記」(誠文堂新光社)。ブログ「和菓子魂!」(http://blog.livedoor.jp/wagashibuyer/) Twitter:@wagashibuyer

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