2021.3.12

【ボンボニエールの物語vol.41】続・陶磁器製ボンボニエールの物語―三笠宮家

扇形三笠山に若杉桐文
三笠宮御結婚につき皇太后(貞明皇后)御主催御内宴、大宮御所にて
昭和16年(1941年)12月7日
6.5×9.5 高さ2.5 cm (個人蔵)

前々回、陶磁器のボンボニエールについてお話しした。今回は、その2回目。陶磁器製の始まり、始まり、についてである。その舞台は、三笠宮家である。

陶磁器製のボンボニエールの初見は、三笠宮崇仁たかひと親王・百合子妃の結婚に際し、貞明ていめい皇后から贈られたものである。

【ボンボニエールの物語vol.28】戦時下でもボンボニエールは作られていた、の物語」を覚えていらっしゃるだろうか。

戦争が長期化していた昭和15年(1940年)頃、軍事色は濃くなり、日常生活においてさまざまな制限が課され、物資の不足も顕在化してきた。そういった中、同年7月7日に施行されたのが、宝石や銀製品などの製造・加工・販売を禁止した、いわゆる贅沢ぜいたく禁止令である。皇室の方々であっても、銀でボンボニエールは作れない状況となった。

崇仁親王・百合子妃はその翌年の昭和16年(1941年)に結婚された。慶事であるのだから、当然、ボンボニエールを制作することになるのだが、銀では作れないため、見た目はさほど銀とかわらない、ジュラルミンでボンボニエールを制作された、というお話をした。

その2人を大宮御所に招かれ、昭和16年12月7日、貞明皇后が開かれた内宴で配られたのが、陶磁器製のボンボニエールである。おめでたい扇形の蓋面には、三笠宮家の由来となった奈良の三笠山と崇仁親王のお印である「若杉」、百合子妃のお印である「桐」が描かれている。扇のかなめの部分には、銀彩で菊御紋を配す。身の側面には、唐草と鳳凰ほうおうが彩り鮮やかに描かれている。銀で制作できなかった分、思い切り華やかにデザインする、との意気込みを感じる作品である。

由来から考えるに、陶磁器でボンボニエールを作ることを思いついたのは、貞明皇后であろう。貞明皇后はアイデアウーマンである。

巣籠鶴形  三笠宮甯子内親王御誕生御内宴
昭和19年(1944年)6月18日  
8.5×4.6 高さ4.5 cm (個人蔵)
甯子内親王のボンボニエール

崇仁親王・百合子妃には、昭和19年(1944年)4月26日に最初のお子様が誕生された。甯子やすこ内親王である。戦争が激しさを増し、3月には、決戦非常措置要綱により、歌舞伎座など19劇場の休場が決まり、料理店やバーも閉鎖された。身重の妃殿下は、静岡・沼津の御用邸東附属邸に疎開、そこで甯子さまはお生まれになったのである。

同年6月に還暦を迎えた貞明皇后は「私の生まれ変わり」と喜ばれ、甯子さまをたいへん可愛かわいがられたという。一緒にママゴトをし、物資不足の中でも、お芋のお菓子を分け与え、「やーさん、やーさん」と呼んでいとしまれた。

甯子さまご生誕に際してのボンボニエールも、時代を反映しての磁器製である。制作は大倉陶園。大倉陶園は、日本陶器合名会社(現・ノリタケカンパニーリミテド)、東洋陶器(現・TOTO)、日本碍子がいし株式会社(現・日本ガイシ)を設立した大倉孫兵衛まごべえ和親かずちか父子が、大正8年(1919年)に設立した洋食器メーカーである。孫兵衛の構想は、大倉陶園を皇室御用達とすることだったという。

5年後の大正13年(1924年)10月、大倉陶園が第11回農商務省工芸展覧会に出品した「波斯模様果物鉢ぺるしゃもようくだものはち」が貞明皇后のお買い上げ品となった。昭和18年(1943年)6月には、照宮成子てるのみやしげこ内親王の結婚に際し、ディナーセットも納入した。孫兵衛の夢はかなった。

甯子さまご生誕記念のボンボニエールは、その翌年の作品である。「大倉ホワイト」と呼ばれる白い磁胎じたいの鶴は、親子の情愛を示す巣籠すごもり鶴形。手のひらにそっと置きたい、愛しい一品である。

長佐古美奈子

プロフィール

学習院大学史料館学芸員

長佐古美奈子

学習院大学文学部史学科卒業。近代皇族・華族史、美術・文化史。特に美術工芸品を歴史的に読み解くことを専門とする。展覧会の企画・開催多数。「宮廷の雅」展、「有栖川宮・高松宮ゆかりの名品」展、「華ひらく皇室文化-明治宮廷を彩る技と美―」展など。著作は、単著「ボンボニエールと近代皇室文化」(えにし書房、2015年)、共著「華ひらく皇室文化-明治宮廷を彩る技と美―」(青幻舎、2018年)、編著「写真集 明治の記憶」「写真集 近代皇族の記憶―山階宮家三代」「華族画報」(いずれも吉川弘文館)、「絵葉書で読み解く大正時代」(彩流社)など。

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