2020.8.14

【ボンボニエールの物語vol.28】戦時下でもボンボニエールは作られていた、の物語

前回に引き続き今回も戦争にまつわるお話。

このコラムでご紹介してきたボンボニエールはそのほとんどが銀製であった。それは繰り返しになるが、明治維新で職を失った金工職人の技を守り、技術を海外へ広めるという皇室の意図があったからである。しかし、vol.5 でご紹介したように、明治期には、漆塗りのボンボニエールも作られていた(【ボンボニエールの物語vol.5】明治のボンボニエール 有栖川宮家の物語)し、なんと紙製のボンボニエールがあったこと(【ボンボニエールの物語vol.8】大正9年 はかない紙と強い愛の物語) もご紹介した。

今回ご紹介するのは、銀でボンボニエールを作ることができなくなったために苦肉の策で作られたボンボニエールである。

木瓜形桐花文ボンボニエール 三笠宮崇仁親王・高木百合子成婚
昭和16年(1941年)11月12日 径6.0 高2.1 cm
(学習院大学史料館蔵)

ジュラルミン製のボンボニエール

戦争が長期化してきた昭和15年(1940年)頃、軍事色は濃くなり、日常生活においてさまざまな制限が出、また物資の不足も顕在化してきた。そういった中、同年7月7日に施行されたのが、宝石や銀製品などの製造・加工・販売を禁止した、いわゆる贅沢ぜいたく禁止令である。この規則施行後にあの有名な「ぜいたくは敵だ!」というスローガンが出てくるのである。

三笠宮崇仁たかひと親王と高木百合子さんは、昭和16年(1941年)に結婚された。御慶事であるのだから、当然ボンボニエールを作ることになる。しかし、贅沢禁止令のため皇室の方々であっても、銀でボンボニエールは作れない。そこで見た目はさほど銀とかわらないジュラルミンでボンボニエールが制作された。ジュラルミンはアルミ合金であるからたいへん軽く、32グラムしかない。軽さゆえなのか、時代背景を知っているせいか、なんとなく寂しい感じがしないでもない。しかし、このジュラルミン製のボンボニエールを開けると、その内側は、なんと絹で内張りがされているという豪華さなのである。こんなところにこんな技を使うとは、さすが職人の技を守る皇室の発注品である。

桐花文木瓜形内部

木製のボンボニエール

昭和天皇の第1皇女である照宮てるのみや成子しげこ内親王は昭和18年(1943年)10月に東久邇宮ひがしくにのみや盛厚王もりひろおうと結婚された。皇女の結婚とはいえ、戦時下であることから質素に執り行われ、婚儀に着用した十二単じゅうにひとえは母・香淳こうじゅん皇后が使用したものだったという。そんな中でも、ボンボニエールは作られたのである。ただし、時代を反映して、いずれも木製であった。

婚儀祝宴午餐ごさんの際に下賜されたのは、木製丸香合形梅唐草文のボンボニエール。木地の上に銀蒔絵ぎんまきえが施されている。周りに唐草とともにめぐらされているのは成子内親王のお印である紅梅。御紋がついていなければ香合かと思う一品である。

丸香合形梅唐草文  東久邇宮盛厚王・成子内親王成婚午餐
昭和18年(1943年)10月5日 最大径6.6 高さ2.6 cm
(個人蔵)       
丸形紅梅枝文    東久邇宮盛厚王・成子内親王御結婚御記念晩餐(大宮御所)
昭和18年(1943年)12月6日 径5.7 高さ2.2 cm
(個人蔵)

もう一つは婚儀の後、同年12月6日に大宮御所で開かれた晩餐の折に、大宮さまから下賜されたボンボニエールである。大宮さまとは大正天皇のきさき貞明ていめい皇后のこと。成子内親王にとっては祖母にあたる。貞明皇后はご自分のお子さまたちのみならず、皇族の方々の婚儀の際に様々な意匠を凝らしたボンボニエールを贈っている。この物語については、いずれ別の機会に。

その大宮さまから贈られたボンボニエールは竹製。こちらにも紅梅と御紋が描かれている。私が実見したものは、蓋と身が合わなくなってきていた。竹製ゆえ、乾燥し、収縮したのであろう。

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長佐古美奈子

プロフィール

学習院大学史料館学芸員

長佐古美奈子

学習院大学文学部史学科卒業。近代皇族・華族史、美術・文化史。特に美術工芸品を歴史的に読み解くことを専門とする。展覧会の企画・開催多数。「宮廷の雅」展、「有栖川宮・高松宮ゆかりの名品」展、「華ひらく皇室文化-明治宮廷を彩る技と美―」展など。著作は、単著「ボンボニエールと近代皇室文化」(えにし書房、2015年)、共著「華ひらく皇室文化-明治宮廷を彩る技と美―」(青幻舎、2018年)、編著「写真集 明治の記憶」「写真集 近代皇族の記憶―山階宮家三代」「華族画報」(いずれも吉川弘文館)、「絵葉書で読み解く大正時代」(彩流社)など。

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