特別展 工藝2020-自然と美のかたち-/2020年9月21日(月・祝)~11月15日(日)/東京国立博物館 表慶館

自然と工芸の関係性をテーマに、現代工芸を牽引する多彩な82件が集結

 日本では、自然との共生による密接な精神的感性と固有の生命感が芽生えて我が国特有の工芸を発展させてきました。それは、長い歴史と文化が形成される中で、変化に富む地形と四季折々の気候、そして豊かな風土に育まれた自然観を要因とすることが大きいと考えられます。82名の作家らが自由な感性によって多彩な芸術表現を発揮した、優れた近年の工芸作品82件をご覧いただきます。

表慶館・図面/第1章「金は永遠に光り輝き、銀は高貴さに輝く」、第2章「黒はすべての色を内に吸収し、白はすべての光を撥する」
表慶館・図面/第3章「生命の赤、自然の気」、第4章「水の青は時空を超え、樹々と山々の緑は生命を息吹く」

 本展では、第1章「金は永遠に光り輝き、銀は高貴さに輝く」、第2章「黒はすべての色を内に吸収し、白はすべての光を撥する」、第3章「生命の赤、自然の気」、第4章「水の青は時空を超え、樹々と山々の緑は生命を息吹く」という、大まかにした四つのニュアンスで構成しました。これらは、日本を歴史的に表象した天然の煌めきや、自然を彩る根源的な黒と白であり、また工芸素材の色合いや自然の形象を彩る、いうなら生命の象徴であろうと考えます。

素材分野紹介

陶磁

陶土や陶石を主原料とする、土器、陶器、炻器、磁器の総称。主にはろくろ成形やひもづくり、たたらづくり、型を用いる成形をし、窯に入れ高温で焼成して仕上げます。近代に西欧の窯業科学と技術がもたらされ、多くの作家が伝統と新しい技術を踏まえて、原料の土石や素地の成形、加飾、施釉、焼成等に自らの創意と技術を工夫した多様な制作を表します。

白瓷面取壺

前田昭博 白瓷面取壺 平成29年(2017) 個人蔵
磁器 31.3×31.3、H.38.2

白磁の器の肌に影ができることで、作品に生命が宿り存在感を増していく。自分なりの表現とともに、影が魅せてくれる表情を器のフォルムに取り入れたいと思っています。

色絵雪花薄墨墨はじき雪松文蓋付瓶

今泉今右衛門 色絵雪花薄墨墨はじき雪松文蓋付瓶
令和元年(2019) 個人蔵
磁器、プラチナ、色絵、墨はじき 37.6×36.3、H.62.5

江戸期から伝わる「墨はじき」技法に白の微妙な「雪花墨はじき」と「プラチナ彩」をとりいれ、 今までにない大胆な墨色と白の構図の作品に仕上げました。

染織

絹や麻、木綿等を材料にして布を染めたり織ったりします。身体に纏う衣類や調度類を被覆する布、空間を彩る掛物の外、現代では糸や布によって空間を造形するといった芸術表現の分野です。布の光沢や肌合いと染料の透明感があり、染の手法や織の感覚、絵画的あるいは装飾的な意匠の描写と構成など多様な創作表現があります。

友禅着物

森口邦彦 友禅着物 緋格子文 令和元年(2019) 個人蔵
絹、友禅 138.6×180.0

着物は文字通り着られることで作者が描こうとしたイメージが完成します。白と黒が交叉する立体感のある格子文様は、スパイラルになって身体を被い、緋色の空間は丸味を帯びてくるでしょう。

森只中

中井貞次 森只中 平成24年(2012) 染・清流館蔵
麻布、糊防染、藍染め 160.0×140.0

森の中の万物のうごめきやその生命力、エネルギー、森の中にひしめく時空を表現しました。

漆工

漆の木から採取される樹液は、日本では縄文時代頃から塗料や絵具、接着剤として、装飾品や日用の什器等に用いられました。奈良・平安時代以降に中国からもたらされた装飾技法をもとに、日本の風土と生活様式のなかで特有の技術と装飾表現を獲得し、独自の美しさに発展してきました。

柏葉蒔絵螺鈿六角合子

室瀬和美 柏葉蒔絵螺鈿六角合子 平成26年(2014) 個人蔵
漆、鉛、螺鈿、蒔絵、乾染 26.0×24.7、H.11.8

秋陽の金色に輝く情景を表現。乾漆造形の合子に、柏の実を夜光厚貝で、葉は鉛板および金鑢粉と平目粉で蒔き分け、研ぎ出し蒔絵で仕上げています。

赤富士

伊藤裕司 赤富士 平成27年(2015) 個人蔵
色漆、金箔、蒔絵 154.0×111.0

日本人の心の中に一点景を占めている富士を、山容、前景をレリーフにして色漆の塗かさね研出し、月と雲・霞を金箔、白金粉、金粉で表現しました。

金工

金属を素材として、特性の熱による熔解性や叩き延す伸展性等を利用して成形し、さまざまな細工や装飾を施します。日本では古来から、金、銀、銅、錫、鉄を主に青銅や朧銀等の合金を用い、それぞれの特質に適合した技法を発展させ、さまざまな装身具や武具、仏像・仏具、各種の道具や調度品が作られてきました。近年では、アルミニウムやステンレス等の新しい素材を活用しています。

宙の響

春山文典 宙の響 平成29年(2017) 個人蔵
アルミニウム、鋳造 55.0×38.0、H.60.0

宙へのロマンを奏でる音の祭器として表現しました。

象嵌朧銀花器「チェックと市松」 

中川衛 象嵌朧銀花器「チェックと市松」 令和2年(2020)
個人蔵 朧銀、象嵌、彫金 38.0×11.0、H.25.0

タータンチェックと市松模様を重ね合わせたものを、金、銀、赤銅など金属の素材を使い多重象嵌しています。

木竹工

変化に富む気候と風土に恵まれた日本は、檜や松、欅等の多種多彩な有用樹木や真竹等の竹材が豊富で、古来から、建築とともにさまざまな生活の調度品や道具がつくられてきました。近代以降、多種な用材とそれに適した技法を駆使して個性的な創作を表す木工と、独自に創意工夫した編組技法と染色、個性的表現を獲得して花籃等の造形や彫刻的な立体を強調する竹工に、現代的な感性を備えた創作があります。

流紋─2018

本間秀昭 流紋─2018 平成30年(2018) 個人蔵
【竹工】竹 72.0×24.0、H.89.0

日本海の荒波。波のうねりと激しく岩に打ちつける波しぶきを表現した作品です。Uの字に曲げた無数の竹ヒゴを、一本一本、波の模様を意識し、本体に籐止めして制作しました。

欅緋拭漆舟形盛器

村山明 欅緋拭漆舟形盛器 平成29年(2017) 個人蔵
【木工】木、刳物、拭漆 62.0×32.0、H.3.3

光による移動感を感じられるよう曲面を強調し、左右に抜ける拡がりが、舟の前後になる曲面に作り出し、側板も同様に掘り出し舟板の流れを表現しました。

人形

古くから日本の各地で、呪術や祭礼の道具、また愛玩用にさまざまなものがつくられてきました。御所人形や、衣裳を被せつけ布を木目込みし、布や和紙貼り、彩色を施した人形などがある。大正時代末期頃から人形創作を訴える作家らが活躍し、現代に至って独自の主題に即し個性的な造形手法と意匠構成を獲得した表現芸術へと高めました。

海から天空へ

奥田小由女 海から天空へ 平成30年(2018) 個人蔵
樹脂、胡粉仕上げ、彩色 60.0×40.0、H.85.0

東日本大震災の津波によって、海に流された多くの尊い命を安らかに天空に誘いたいと願いながら制作いたしました。

呉女

林駒夫 呉女 平成27年(2015) 個人蔵
木芯桐望、相込布貼 19.0×6.0、H.32.5

天平の頃、大陸から伝わり古人の心を掴んだ伎楽に登場する呉女をモチーフに、古代の日本人の豊かな国際性を思い制作しました。

七宝・ガラス・截金

金属の素地にガラス質の釉薬を文様に盛り、窯で焼成して溶着させた後に研磨して仕上げる七宝。珪砂を主原料に高温で熔解し、かたちをつくり冷却してできる透明なガラス工芸、金箔や銀箔を細長い線状や小片に切って貼り付けて模様とする截金などがあります。

硝子絹糸紋鉢「夕陽」

安達征良 硝子絹糸紋鉢「夕陽」 令和元年(2019) 個人蔵
【ガラス】ガラス、切子 38.3×32.2、H.12.3

和紙を透かして見たときの「やわらかい光」を表現し制作しました。白ガラスを粉にして伴押ししたものを高温で焼き付け、和紙のような柔らかな光を表現しました。

切金砂子彩箔「凛」

月岡裕二 切金砂子彩箔「凛」 平成27年(2015) 個人蔵
【截金】金箔、彩箔、截金 112.0×146.0

花の持つ、清楚で凛とした気品に魅了され、「カラー」の花をモチーフに制作しました。ベースはテンペラ画の石膏の盛上げ技法でレリーフを作り、岩絵具にて彩色し、各色の砂子と金泥等で仕上げました。


  • ※サイズは㎝です