日本美を守り伝える「紡ぐプロジェクト」公式サイト

2019.9.3

ICOM京都大会 歴史薫る厳かな幕開け

トークセッション「美を守り、美を伝える」も開催

開会式は、京都・醍醐寺の僧侶らによる声明で幕を開けた

世界の博物館関係者が集う「第25回国際博物館会議(International Council of Museums、ICOM=アイコム)京都大会」は2日、主会場の国立京都国際会館(京都市左京区)で本格的な議論が始まった。日本初開催となる大会には、118の国・地域から過去最多の約4200人が参加。パネル討議などを通じて、様々なテーマで課題や解決策を話し合った。

植民地支配を受けた国からの文化財返還

「デコロナイゼーション(脱植民地化)」をテーマにしたパネル討議では、かつて植民地支配を受けた国から流出した文化財の返還などを巡り、欧米やアジア、アフリカの専門家らが意見を交わした。

収奪などによって流出した文化財の返還事例は世界的に増えているが、多様な経緯があることから、画一的な返還には否定的な意見もある。ICOMインドのレナ・デワン委員長は、近年自国の文化財が返還された例を挙げた上で、「文化遺産を取り戻すことはインドの重要な外交政策。(持ち出された文化遺産は)家族から離れていたようなもので、歴史が培われたところに置くべきだ」と語った。

僧侶ら22人による声明

国立京都国際会館(京都市左京区)で2日に開かれた開会式。僧侶らによる声明しょうみょうが披露されるなど荘厳な雰囲気が漂う一幕もあり、会場は終日、歓迎ムードに包まれた。

開会式会場のメインホールは満席で、入り切れない参加者は別室で中継モニターを眺めた。式の冒頭、醍醐寺(京都市伏見区)の仲田順和座主を中心に僧侶ら22人が、大会の成功を祈願する法要として声明を披露。京都大学長の山極寿一・日本学術会議会長が「国や地域の垣根を越えて、活発な討論がされるよう期待している」とあいさつした。

来賓の西脇京都府知事は「京都の伝統文化や美しい景観にも触れていただきたい」と語り、京都市の門川大作市長も「食もお酒も文化。期間中、大いに楽しみながら、偉大な成果を上げることを祈ります」とアピール。式の締めくくりには獅子が登場する能も上演された。

「京都らしさ」が目立つ歓待ぶりに、カナダ・オンタリオ博物館協会役員のマリー・ラロンドさんは「素晴らしい歓迎。(声明や能に)長い歴史を感じた」と笑顔。オランダ・プリンセスホフ陶器博物館の学芸部長、ヨス・タークマさん(62)も「博物館ではアジアの陶器を多く所蔵している。大会を機にアジアとのネットワークを充実させたい」と意気込んだ。
 
大会全体を通じて、京都や大阪の学生ら約400人の市民ボランティアが関わり、会場内の案内や受付などで運営に協力している。大会は同会館などで7日まで行われる。

「日本の美」継承 意義語り合う

同日、イベントホールでは、読売新聞社のトークセッション「美を守り、美を伝える」が行われた。宮内庁、文化庁と読売新聞社が国宝などの「保存・修理・公開」に取り組む「紡ぐプロジェクト」が紹介され、宮田亮平・文化庁長官と佐々木丞平じょうへい・京都国立博物館長、老川祥一・読売新聞グループ本社最高顧問・主筆代理の3人が、日本の美を国内外、未来に継承する意義を語り合った。

「紡ぐプロジェクト」について語る(左から)宮田長官、佐々木館長、老川最高顧問(2日、京都市左京区で)

宮田長官は「誇りを持って日本の宝を感じてもらい、世界の人々と喜びを共有することが大事」と述べ、佐々木館長は「紡ぐプロジェクトの理念に共感し、積極的に手を携えて取り組みたい」と強調。老川最高顧問・主筆代理は、美術品などを高精細画像で紹介する紡ぐプロジェクトの公式サイトに触れ、「文化財の美しさ、技術の繊細さを実感していただく努力を続けたい」と語った。

(2019年9月3日読売新聞朝刊より掲載)

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