2020.9.15

【作家が語る】大角幸枝―工藝2020出展作品から

銀打出花器ぎんうちだしかき海峡かいきょう
大角 幸枝 2013年 W・D・H:36.2・30.3・24.5cm (個人蔵)【金工】

楕円形の厚板(3mm厚)を打ち上げた銀の花器である。この楕円は、円を真ん中から左右に引き伸ばしたような形である。ひたすら打ち上げて行くと予想を上回る湾曲したカーブが出来た。長手の素材は打つほどに両端が自然に持ち上がってくる。金属の特性である展延性によるもので、縁が立ち上がり、カーブがきつくなると地金が縁の谷の部分に寄ってきて亀裂を生ずる。これを切り取ると、ますますカーブが深くなる。それを避けるのとデザイン上の見せ場を作るという二つの理由から、前後両面の縁のカーブの下方に、互い違いになるように畝を打ち出した。それに沿って表面に金と鉛の布目象嵌で波を走らせ、その端は両側面で渦を巻くようにした。幅広の刷毛で一気に描いた波濤の動勢と地金の動きを同調させて到達した形である。鳴門の渦を一度直に見たいと思いながら未だ果たせずにいる。「海峡」という題は鳴門海峡をイメージしたものである。

大角幸枝(1945- ) ōsumi Yukie
静岡県生まれ。1969年東京藝術大学美術学部芸術学科工芸史専攻を卒業後、彫金の桂盛行と鹿島一谷、鍛金の関谷四郎に師事して高度に広範な金工技法を修得した。鍛金による端麗な槌目の残る銀や朧銀の器胎に、鏨で布目を施して金や銅合金、鉛などを打ち込む布目象嵌などの伝統の高度な技法を駆使して、波濤や風、月光といった自然の事象をおおらかに表し力強い造形としている。伝統工芸を主体に活動し、1986年奨励賞、1987年日本工芸会総裁賞を受賞し、2009年及び2014年に日本工芸会保持者賞受賞を重ねた。また1991年香取正彦賞、MOA岡田茂吉賞優秀賞(2010年<OA美術館賞)を受賞した。2015年重要無形文化財「鍛金」保持者認定。《銀打出花器 海峡》は、打出しの鍛金技法によって鳴門の海峡の心象を大きなうねりの造形とし、金で月光を、鉛で風の流れを布目象嵌で表して情感豊かな装飾としている。東京都国分寺市在住。

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「工藝2020」開催概要や日時指定チケットの情報は公式サイトで

https://tsumugu.yomiuri.co.jp/kogei2020/

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