2020.12.15

【歌舞伎 河内山・雪の石橋】白鸚が挑む品と愛嬌のヒーロー/染五郎「華やかに」

国立劇場(東京・半蔵門)の12月歌舞伎公演(2020年12月3~26日)は、河竹黙阿弥が手がけた世話物の傑作を二部制で上演する。二部は、「天衣紛上野初花くもにまごううえののはつはな―河内山―」と、舞踊「鶴亀」「雪の石橋」。大胆不敵な河内山宗俊こうちやまそうしゅんを演じる松本白鸚さんと、「雪の石橋」を舞う孫の市川染五郎さんに意気込みや見どころを聞いた。

第1部の見どころはこちら

あらすじ
江戸城で将軍や役人らに茶の湯の接待などを行う御数寄屋 おすきや 坊主の河内山宗俊が質屋を訪れると、女主人から、「大名家に奉公している娘のお藤が、主人である出雲守(中村梅玉さん)からめかけになれと迫られ、軟禁されてしまい困り果てている」と聞く。河内山は破格の報酬と引き換えに娘を助け出すことを引き受ける。出雲守が言うことを聞かないお藤を手討ちにしようとしているところに、上野・寛永寺から高僧が使者としてやってくる。高僧に説得され、出雲守はしぶしぶお藤を親元に帰すことに同意するが、部下の一人が高僧の正体が河内山であることに気づき……。

権力を恐れない、胸のすく結末

御数寄屋坊主は下級の役職ながら将軍家の「直参」であり、将軍や大名の身近に仕えることから、実際に役職を利用して大名の弱みを握ることもあったという。河内山も、豪胆でしゃれっ気があり、権力を恐れない男。高僧に化けた時のしらじらしいほどの品の良さと、正体が露見した後の開き直り、そして出雲守や家臣らに「ばかめ」と言い放つふてぶてしさ、そのギャップと痛快さが見どころで、その結末に胸がすく。白鸚さんも「こういう時代だからこそ、河内山の小気味のいい啖呵たんかで、一時でも嫌な現実を忘れていただきたい」と話す。

序幕 上州屋見世先の場
(右から)河内山宗俊(白鸚)、和泉屋清兵衛 (大谷友右衛門)、後家おまき(中村歌女之丞)ほか(国立劇場提供)

過去に何度も河内山を手がけてきた白鸚さんは「河内山は父(初代松本白鸚)から習いました。数々の注意を受けましたが、一番心の中に残っているのは、御数寄屋坊主の河内山は、品がなければ駄目だと。(大名屋敷の)玄関先で居直って啖呵を切るシーンも、品がなければいけないと言われました」と振り返る。

「河内山はヒーローという面を持ちながら、愛嬌あいきょうのある男です。ヒーローと愛嬌、この二つを持ち合わせた度量の大きな人間は、今はなかなかいらっしゃらないかもしれない。河内山は知恵とセンスを兼ね備えた魅力的な人。何度勤めても、なかなかうまくいかない、尽きるところのないお役です」と話す。

二幕目第二場 松江邸書院の場 (右から)使僧北谷道海実ハ河内山宗俊 (白鸚)、松江出雲守(中村梅玉) (国立劇場提供)
役者は苦しみを勇気に、悲しみを希望に変える

コロナ禍でなかなか芝居ができなかった今年を振り返り、「もう歌舞伎はできないのかと思ったこともありましたが、いざやり出すと変わらずにやれています。役者は憑依ひょういするとおっしゃる方がおられますが、私も楽屋に入ると、きものが落ちるといいますか、日常生活を忘れてしまう。自然とそうなるんです」と話す。

「舞台で普通のことをお見せしたのでは、お客様は嫌な世の中へ帰っていかれてしまう。私たちは、人間離れしたようなものを、理屈に合わない世界をお見せしないといけない。役者は、お客様の苦しみを勇気に、悲しみを希望に変えないといけません。良いお芝居をお見せして、日ごろの憂さを忘れていただきたい、その一心です」

二幕目第三場 松江邸玄関先の場 (国立劇場提供)
あこがれの獅子もの、幸四郎さんが指導

染五郎さんが出演する舞踊「雪の石橋」は、能「石橋」を題材にした作品の一つで、文殊菩薩の聖地である中国の清涼山に、菩薩を守護する霊獣・獅子の精があらわれ、勇壮に舞う。吹雪の中、男たちとの立廻たちまわりなどを交えた荒々しくダイナミックなさま、豪快な毛振りから、世の長久を祈り静謐せいひつの中で舞い納めるラストシーンまで、目が離せない。

雪の石橋 獅子の精(市川染五郎) (国立劇場提供)

今回初めて挑戦する染五郎さんは、「26年前に父(松本幸四郎)が国立劇場で勤めており、当時の映像を見ると、とてもかっこいい作品。子どもの頃から獅子ものに憧れていましたので、勤められるのがうれしいです」とはにかむ。

父の幸四郎さんから指導を受けているといい、「父は何度かお稽古も見に来てくれて、技術的なアドバイスをしてもらっています。獅子物なので毛振りもありますが、そこに至るまでの踊りも大切ですし、(舞台上で一瞬で衣装を変える)引き抜きや立廻りといった歌舞伎らしい演出も盛り込まれています。踊りの技術的な部分に加えて、後見さんとも息が合うよう、お稽古していきたいです。二部の最後の演目なので、華やかに締めくくることができればと思います」と意気込んでいた。

還暦を迎えた福助さんも出演

舞踊「鶴亀」は、能「鶴亀」を長唄にした舞踊。正月の宮中の節会せちえで、鶴と亀が舞い遊び、女帝が天下太平と五穀豊穣ほうじょうを祈る。女帝を勤める中村福助さんは、今年1月の出演(歌舞伎座)以来、約11か月ぶりの舞台となる。弟の中村芝翫さんは福助さんの出演について、「兄は今年還暦を迎えて、国立劇場さんの優しいお心遣いで舞台に立たせていただき、弟としても大変うれしく思っています」とし、福助さんも「来年は穏やかな年になりますよう、思いを込めて踊らせていただきます」とコメントを寄せた。

鶴亀(左から) 亀(中村歌之助)、女帝 (中村福助)、鶴(中村福之助) (国立劇場提供)

(読売新聞紡ぐプロジェクト事務局 沢野未来)

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開催概要

日程

2020.12.3〜2020.12.26

【第二部】午後3時30分(午後6時終演予定)

※開場は開演の45分前の予定です
※各部とも30分休憩がございます
※15日(火)は休演

会場

国立劇場
東京都千代田区隼町4−1

料金

1等席 7,000円(学生4,900円)
2等席 4,000円(学生2,800円)
3等席 2,000円(学生1,400円)

お問い合わせ

国立劇場チケットセンター(午前10時~午後6時)
0570-07-9900
03-3230-3000[一部IP電話等]

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