2019.12.3

【歌舞伎 近江源氏先陣館―盛綱陣屋―、蝙蝠の安さん】令和元年を締めくくる意欲作二本立て

東京・半蔵門の国立劇場12月歌舞伎公演(4~26日)は松本白鸚はくおう・松本幸四郎が中心となり、時代物の名作「近江源氏おうみげんじ先陣館せんじんやかた―盛綱陣屋―」と、チャップリンの映画「街の灯」が原作の新歌舞伎「蝙蝠こうもりの安さん」を2本立てで上演する。

白鸚 時代物の大役に挑む

「盛綱陣屋」は大坂の陣で活躍した真田信之、幸村兄弟を鎌倉時代の武将、佐々木盛綱・高綱兄弟に置き換えた物語。敵味方に分かれた一族の悲劇が描かれる。白鸚は主人公の盛綱を28年ぶりに勤める。

2018年1月の「高麗屋三代同時襲名」で二代目白鸚を襲名し、19年に入ってからは、1月に「一條大蔵ものがたり」の大蔵きょう、3月には「傾城けいせい反魂香はんごんこう」の又平と、長年、演じる機会がなかった時代物の大役に再び取り組んでいる。今回の盛綱も、「昔やった役をもう一度勉強し直そうということですが、それは自分の問題。舞台に立ったらお客様が喜んでくれるかどうかの一点だけです。今年の締めくくりの仕事として恥ずかしくないように」と抱負を語っていた。

幸四郎 念願の「チャップリン歌舞伎」

幸四郎は「盛綱陣屋」ではすっきりとした二枚目の注進(戦況を報告する役)を勤める。そして、その次に上演される「蝙蝠の安さん」では、タイトルロールの主人公を演じる。

今回が初演ではなく、昭和初期に十三代目守田勘弥の主演で上演された作品(作・木村錦花)を88年ぶりに復活させる。

顔に蝙蝠の入れ墨を彫った主人公は古典の「与話情よわなさけ浮名横櫛うきなのよこぐし」に出てくる印象的な脇役だが、そのキャラクターを映画でチャップリンが演じた放浪者に重ね合わせている。

映画に出てくる巨大な銅像を大仏に変えたり、ボクシングの場面を相撲にしたりするなど、物語は和風になっており、「(歌舞伎として)十分に上演が可能だと思った」と幸四郎は言う。

安さんの衣装は「東海道四谷怪談」の登場人物、与茂七の「つぎはぎ」の着物を参考にしてデザインし、さらには上方歌舞伎「廓文章くるわぶんしょう 吉田屋」の主人公・伊左衛門が着ている紙衣かみこのようにセリフの文字が袖などにあしらわれた。音楽も、無声映画の劇中曲を三味線音楽に仕立てるなど、随所に歌舞伎味を織り交ぜている。

幸四郎は「現状のままでも(許可を取らずに)上演することはできたが、チャップリンの映画が原作と明示することにこだわった」と、丁寧に関係者にコンタクトを取り、生誕130周年と命日(12月25日)という絶好のタイミングでの上演が実現することになった。

12月の歌舞伎公演は、歌舞伎座で坂東玉三郎主演の「本朝白雪姫譚話ものがたり」、新橋演舞場では尾上菊之助主演の「風の谷のナウシカ」と、話題作がそろう。「埋もれるわけにいかない」と幸四郎は気合十分に語っていた。

公演は午前11時半開演。また、12月6、13、20、24日、25日は、午後7時から「Chaplin KABUKI NIGHT」と銘打ち、「蝙蝠の安さん」を単独で上演する(読売新聞協賛)。劇場ロビーではチャップリン関連の資料や「蝙蝠の安さん」が連載された当時の読売新聞の記事パネルなどを展示。専用パンフレットも販売する。24、25日には記念イベントも予定している。(敬称略)

(読売新聞文化部 森重達裕)

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https://www.ntj.jac.go.jp/schedule/kokuritsu_l/2019/12150.html

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